クラウドに対する企業戦略の変化

Forrester Researchが、"Market Overview Of Cloud Service Strategies From Global IT Providers"というレポートを出しています。($1999と高額ですが)

今回の金融危機から脱するために、cloud computingを利用してコストを削減する、というシナリオは以前からあったのですが、どうやらその戦略的重要性が増しているそうです。お試しでcloud computingに一歩踏み出してみるというのではなく、軸足を移そうとしているとか。情報セキュリティやミッションクリティカル性の問題などはあるにしても、そこまで追い詰められている企業が多いということでしょうか。

cloud computingに代表されるサービス化・共用化の動きは最近目立っていますが、以前からのアウトソーシングの流れに沿ったものだと考えています。遅かれ早かれ、集約して共用化し、スケールメリットを追及する世界。自分の考えを整理するためにIT outsourcingレイヤ(ITO。cloud computing, IaaS/PaaS/SaaSを含む。ERPCRMミドルウェア、HWのアウトソーシング)とBusiness Process Outsroucingレイヤ(BPO。人事部や経理部など、システムだけでなく人間組織も含めて丸ごとアウトソーシング)。

clound computingの流行で注目されているのはITOレイヤですが、既にビジネス実行フェーズに入っているため、研究の余地が大きいのはBPOだと考えています。(参考文献:http://www.meti.go.jp/press/20080627003/20080627003.html)なので、UC Berkeleyで研究しているわけなのですが、最近その欠点も見えてきました。

  • ITO

 長所:技術や数字(コストや利用効率、信頼性など)で勝負できるので、日本からでも世界と戦えるかも
 短所:既にSVを中心とした激戦状態。相当な差異化要因かスケールメリットが無いと勝負にならない。半導体と同じ低価格競争に向かってしまうかも

 長所:1回のみのシステムインテグレーションではなく、人間組織も含めた継続利用が期待でき、コスト削減効果も大きい
 短所:個別の企業文化や属人性の影響が大きいので、アウトソーシング自体が難しく、さらに共用化するのはかなり困難。もともと欧米では大型BPO事例が出始めていたので共用化の可能性はあるかもしれないが、日本で行うのは大変。日本で成功したとしても、そのモデルがそのまま世界に通用するわけではない


さてどうしたものか。Forresterのレポートが正しいとすると、BPOを推進しやすくなっている気がしますが、その裏付けが必要ですね。