SVC 総括

JTPAシリコンバレーカンファレンス2009と、前後の企業訪問が終了。カンファレンスの意図は、「シリコンバレー(SV)で働きたい日本人エンジニアのために、SVで既に働いているエンジニアとのコミュニケーションの場を設けること」で、講演者と参加者の論理的距離も近く、SVという現場を知るとても良い機会となっていた。

今回私の参加した目的は「日本人エンジニアが、SVに移住することなく日本や世界各地にいながらにして、イノベーティブで快適な仕事ができるだろうか?」という問いについて、カンファレンスと若い日本人エンジニアを通じて考えることだった。

たしかに、SVのエンジニア労働環境は快適だ。リスキーだとしても、SVに来る価値は十分にあると思う。今回のカンファレンスや企業訪問を通じて、その点は再確認できた。SVに来れる人はどんどん来ればいいと思う。ただ、SVに来る以外に、エンジニアが快適に働くための選択肢は無いのだろうか?才能はあっても事情があって日本や世界各地にいるエンジニアはあきらめるしかないのか?

考えるヒントとなったのは、インド企業のInfosysで聞いたイノベーションサイクルの話だった。以前はインド人エンジニアが快適に仕事をするためにはインド→SVへの移住が当然だったが、
この数年は、

  1. SV(またはインド)でネタ発案
  2. SVでブラッシュアップ
  3. インドに帰って実践

という2・3年周期のサイクルが回り始めているそうだ。そして、その変化をもたらしたのは、バンガロールを中心としたSV化と、インターネットでの情報共有・コミュニケーション。

インドの例がそのまま日本に当てはまるとは思えない。東京がSV化するとしても、数年以内の話ではないだろう。ただ、ネットを利用して自分を変えることはできる。少なくともSVの回転数に合わせられるようにするには、

  • 英語での情報発信と収集: 英語情報を出すことによってプレゼンスを高める
  • 仕事のプロセスを英語化: 仕様書・報告書などのアウトプットだけでなく思考も英語化することによてい、プロセスの途中においても改善できるようにする

といったことが必要となってくるだろう。


問いに対する答えは、現在の状況としてはNoだ。ただし、前述のネットを活用する方向で、移住せずにイノベーティブで快適な仕事ができるようになる可能性はある。
ささやかな事例だが、今回のカンファレンス参加者の企業訪問準備も、赤の他人同士がWebサービスを使いこなして協力することで実現している。これを英語化して、実際の業務に適用するようにしていけば、日本にいてもSVの回転数に合わせて活躍できるチャンスがあるのではないだろうか。もちろん、実力次第だけれども、カンファレンスに参加したエンジニアの実力はとても高いので、世界を席巻するようなIT技術を創出していけると考えている。



P.S.
カンファレンスでは、研究職の参加者に会わなかった。企業だけでなく、大学も含めて。
SVという現場と日本のエンジニアの現状をよく知ることのできる、なかなか無い機会なのに。