村上春樹の講演会

Washington D.C.に行く前ですが、村上春樹の講演会に行ってきました。はじめは嫁さんと行こうとしたんですが、英語わかんないから、という理由で現地の友人と。

チケットはすぐに売り切れたそうです。早めに取っておいて良かった!2000人ぐらいのキャパシティがあるホールが一杯になってました。驚いたのは、アジア系の人が少ないこと。なんでも村上作品は36の言語に訳されていて、世界中で読まれているそうです。英語版と独語版は知ってたけど、アラビア語版やロシア語版まであるとは。

講演での村上春樹の英語は、流暢ではないのですが、言葉がとても正確&簡潔で、話の展開が面白いので、とても楽しめました。驚いたことに、周りのUS American達もゲラゲラ笑ってました。"What's wrong with Berkeley?"(バークレーはどうしちゃったの?)とか、"What if someone could't understand Japanese... I'm sorry for that. But that's not my fault."(日本語が分からない人は。。。残念でしたw。でも僕のせいじゃないよ。) みたいなsarcasticな言い回しがとても上手いです。あれだけUS Americanを笑わせられる日本人って少ないのでは?

まず、ヤクルトスワローズとレイズの岩村の話から入って、処女作を書いて作家になった時の話でこんなことを言っていました。「批評家から異端児扱いされて、不良とか詐欺師って言われた。大抵の作家の場合、だんだんと批評家に受け入れられていくのに、僕は未だに異端児扱いのまま。日本で生きていく上で、他の人と違うと大変なんですよ。」

多くの作家の場合は、初期のファンが20-30代で、作家と共に年を取っていくのに、村上春樹の場合はずっと20-30代が多いそうです。で、村上作品を読んだことを他人と共有しない傾向があるとか。4人家族でそれぞれが別々に買っていたこともあるそうです。

若い人とのコミュニケーションはすごく楽しいとも言ってました。「おバカな質問がいっぱい来るんですよ。例えば、「イカの10本の触手は、何本が手で何本が足ですか?」というのが来る。
そういう質問大好き。あまりにもバカバカしいのと、何で僕に訊くんだ?という感じがするけど、僕の答えは、「イカの前に手袋を10個、靴下を10足置けばわかるでしょう」でした。」とか。

司会役のUCBの先生が、「村上作品は、ありふれた日常の描写の中で、散歩したり、パスタ作ったりしてるだけなのに、何故か深い孤独と非日常感に溢れていて、読み終わった後に救済された感覚が残る。なぜそのようなストーリーを創り出せるのでしょう?」と聞くと、
「僕は創作はしない。毎朝4時ごろに起きて書き始め、心の中のdark placeに降りていく。
そこでただじっと観察している。じーっと。そして何かを見つけ、それが何かを知るためだけに書いている。深く深くにまで降りていくのはとても恐ろしい。帰ってこれないかもしれない。でも、何かをするためには、そこに行かなくてはだめなんです。」

この言葉が深く印象に残っています。10月の始めに、新作の長編を書き上げたそうです。英語で読んでみようかな。